- 作者: 小川洋子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/08/28
- メディア: 単行本
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主人公は、10歳の子持ちに家政婦。ある日、記憶が80分しか持たず、1975年で記憶の止まった数学者の教授のところに派遣されることになる。毎日通うたびに「誕生日はいつかね?」と聞かれ答えると、「いい数字だ。その数字は完全数だ」などと解説してくれる。人とのコミュニケーションに困るたびに数字に関する質問をし、解説をしてくれる。双子素数、不足数、過剰数、フェルマーの最終定理、オイラーの公式などの美化されていく。
主人公の子供がいることを知ると、呼び寄せる。平らな頭をなで「平らな玉は全てを包み込めるルートのような子供だ」とルートと呼ぶようになる。それからはルートに愛情を注ぎ、主人公とルートと博士の3人で夕食をとるようになる。
ある日、江夏豊とタイガースの好きな博士を連れて3人で観戦に行く。そこでファールボールがルートに当たりそうになり、それを博士がかばい、そこから何かが変わり始めた。家に帰ると博士は熱をだし、主人公は就業規則を破り泊り込んで看病をする。それを雇い主の博士の姉に見つかり、家政婦派遣会社に電話され博士の家政婦としての仕事をくびになってしまう。それからは他の雇い主の家でも数字をみるたびに素数かどうか考えるようになる。
またある日、ルートが勝手に博士のところへ遊びに行き、また博士の姉に怒られてしまう。そのとき、博士が「子供の前で喧嘩してはいけない」とある数式をだし、姉はそれに心を動かされ、主人公をまた雇うことになる。しかし、博士の病状はすすみ、記憶が80分も保たなくなってきてしまった。そして、ルートと博士の合同誕生日が3人で過ごせる最後の夜となった。博士には江夏のプレミア野球カードをあげ、博士からルートはグローブをもらった。
その後、博士はちゃんとした施設に入る。家政婦とルートのことは忘れてしまったし、もう覚えることもないのだ。ただ家政婦とルートは今も見舞いに行き、すりきれたグローブで博士と数学の教師になったルートはキャッチボールをする。
数字には力があるのかもしれない。それをきれいな言葉にしてくれる博士が好きだ。
直線は決してひけない。どこまでも続いているものが本当の直線で紙に書かれたものは本当は線分なのだ。とか、0の存在についての話とか。