τになるまで待って

τになるまで待って (講談社ノベルス)

τになるまで待って (講談社ノベルス)

新年最初の小説は森博嗣でした。最初ならば1番好きな作家の京極から始めるべきだったかと少しは思うものの、そんなものは関係なく、ただ長々と読んでいるだけなのでなんでもいいのかなと思う。ただ今は気分的に好きな作家を読みたいなぁと思ったので森博嗣だった。
Gシリーズ第3弾。主人公(?)加部谷恵とその友達、海月及介、山吹早月の3人が探偵赤柳初朗のバイトで森の館に文献資料の探索に行く。そこは超能力者、神居静哉の別荘「俄羅離館」だった。ちょうどそこには神居にインタビューに来た新聞記者、カメラマン、案内の不動産業者と一緒になる。主はそのときおらず、後から現れ、まずは嵐が来ることを予言し、その後異界を主人公たちに体験させてくれる。同じ部屋にいるのに、他のメンバーには加部谷と神居の姿は見えないが声は聞こえる。
その体験の後、加部谷たちは当初の文献探索、神居たちはインタビューになる。ラジオドラマを聞くとインタビューを中断し鍵をかけた部屋にとじこもったままでてこなくなる。約束の時間を過ぎてもでてこず、激しい音や停電に近い現象の後、部屋の壁をこわし開けることにする。外から部屋の様子を見ることもためそうとしたのだが、玄関・裏口ともに閂型の鍵はかかっていないの開かない。外からセメントでかためられているようだ。部屋のドアをこわし、同じく閂型の鍵をはずし、部屋に乗り込むと、神居が首をしめられ頭にも傷を負い死んでいる。
警察に連絡しようにも電話も通じておらず、厚い部屋の壁が携帯の電波も届かないようにしている。窓も壊し、アンテナだけ外にだし、西之園を通じて警察に連絡する。翌日、西ノ園と犀川は警察のヘリで到着する。館の外の蔦に水を与えるためのスプリンクラーと停電の情報を聞き、それだけで犀川は事件の真相を看破する。海月も犀川の言葉を聞き、真相に至る。海月は先に解いていた異界のトリックの説明をする。建築的におかしいドアのつくりと残った人用にテーブルを動かしたことから、ドアを含む部屋の一角が移動できることを説明する。その後、犀川の事件の説明に入る。嵐の予言は神居のパフォーマンスで嵐は実際にはおきていない。光は溶接の光で、雨はスプリンクラーによるもの、ドアを開かなくしたのは嵐が来ていないことを確認させないため。停電も溶接の電力使用のため。密室の窓枠をはずし、神居を殺してからまた窓枠を溶接して犯人は逃げたらしい。だから、犯人は神居のパフォーマンスの手伝いをしてそれを利用して殺した。途中で帰った不動産屋が怪しいが、犯人が名指しされることはなくその後つかまりもしない。
神居の聞いていたラジオドラマのタイトルは「τになるまで待って」だった。Gシリーズとして、φ、θとでてきたがそのつながりが語られることもなかった。ただ、赤柳の調査していることから、真賀田四季、MNIなどが絡んでいることだけが示されている。

感想的にはいつもどおり。森博嗣作品として可もなく不可もなく。でも、他の作家よりはひきこまれる部分がある。やっぱり犀川と海月は天才系なんだろうなぁ。読んでても全然トリックはわかりませんでした。建築的にどうこうというのが今回のテーマ的な感じはした。つくり的におかしいなんて素人には分かりません。嵐がおかしいとかはなんとなく分かったけどね。