女たちのジハード

女たちのジハード

女たちのジハード

なんとなく厚い本とはいうのは買いたくなってしまう。そして、なんとなくよく目にする作家なら尚更。そんな理由でブックオフで100円で購入。
ある火災保険会社のOL達3人がそれぞれ主人公の短編集。未婚のいろんな年齢のOLたちのジハード、人生の戦いという感じの話。
まずは30歳越えのベテラン。見た目は地味だがスタイルは良い。他の目立つ社員にばかり人気がいってしまいもてない。でも、友人OLの紹介であったシナリオライター見習いと一夜の関係になってしまう。そいつは実家で農業をしていて、嫁を探そうとしていた。シナリオは自分の名前がでることもなくうまくいかないので、安定している実家を継ぐ気らしいが、経営の部分だけかかわり、親や親戚に作業をさせている。そういうものについてきてくれそうな地味な女を捜していたらしい。もちろんうまくいかない。
破産物件などを扱う裁判所の競売物件を買おうとする。貯金もたまっているつもりで、普通のマンションを買おうとしたのだけど、信頼して預けていた保険員にすすめられていたものにどんどん加入していたら元本割れを起こしていて、思ったよりもお金を用意できず、友人の意見で競売物件を買おうとする。そういう物件だからやくざなんかが依頼をうけて部屋の前にいすわって、買わないように威嚇したりしている。それをかんしゃく玉なんかで発砲事件に見せかけて警察なんか呼んだりして、やくざと戦う。そして、入札にもちゃんと参加し、競売で物件を落札する。それからは、自分のマンションという帰る場所ができたので、包容力なんかがついてきたのか他のOLたちにも信頼されていくようになる。
25歳になる沙織というOLは、総務に入ろうとしたり、いざというときのために資格をとろうとしたりと恋愛よりはそういう仕事に力が入っている。きっぱりというタイプなので少し嫌われている。英文学科を卒業して、翻訳のスクールにも通い、英語で食べていこうとする。その紹介で弁護士さんの仕事なんかを請け負うが大失敗して釘をさされる。スクールの先生の下翻訳もやっていたが、その役がまったく直されずに雑誌に掲載されたことを抗議したことにより、先生とも仲が悪くなってくる。その事務所の人が離婚を機にアメリカに留学したことを知り、自分も留学を決意する。スキューバの資格を使って短期のバイトで費用をつくり留学する。でも、日本人ばかりでつるんで勉強がうまくいかないところに、たまたま知り合った航空学校の人にヘリコプターに乗せてもらい。そこで世界が変わった。英語で食べていくではなく、英語を使う具体的な職業が必要だったときづく。
リサというOLは、基本的に料理も仕事もなんでも万能にこなす。結婚にあせっている部分もあり、駆け引きなんかもよくする。見た目も良いので社内の広報の部署にうつり、海外ボランティアの仕事をする。送る物資の仕分けやそういう関係の勉強会にも顔をだし、社内報も書くようになっていくが、文章を書くのがどうしても苦手だった。そんなときに講習会でたまたま東大卒の研修医と出会う。海外にボランティアの研修に行った話しをしてくれて、それに合わせて取材のようにリサも優等生的な発言をしたことから気に入られる。彼の実家は開業医なので未来的にもセレブな生活ができると喜んでいる。結婚の申し込みをうけたのだけど、自分についてきれくれる同じ感性の人にであっったと思った彼は、海外に医者として行くことを決意する。そこは医者も薬も物資も不足していて満足な治療もできないし、トイレもないなどの環境の悪さ。セレブどころの話ではない。だから、結婚を断ろうとしたのだけど、もう彼に惚れてしまっていて海外までついていってしまった。
最後は最初のベテランOLがまた登場。ある日お酒をたくさん飲んだ時に、契約していた相手に契約を破棄されて途方にくれている農家の青年にあってしまう。お酒のせいで絡んでしまい、流れで部屋で一緒に寝てしまう。そこから、契約を破棄されたトマトの処分をどうするかで、主婦たちに売ったり、残ったものは加工して瓶詰めにしたり奮闘する。その後も彼の家へ休みの日に農業を手伝いに行く。そこの村の人からはもう結婚するかのように扱われ複雑な気分になる。あまり外に商売を広げたりしないような農家には思いつかないような方法が浮かんだ主人公は、それを実行にうつす。彼からトマトを買い取り、村の調理場と主婦たちをお金で使えるようにしてもらい、ちゃんとした作り方を友人のコックに教わり、瓶詰めを商品化する。その売り場は自分で保険会社での経験を生かし、地元で営業をまず始める。そして、東京の大手デパートでも手作り品として置いてもらえるように交渉する。そんなときに、彼にちゃんと結婚を申しこまれるが、仕事を軌道にのせたいと言う。「愛しているから待って」という口に自然にでた言葉。それで自分の気持ちをちゃんと知ることになる。

たぶん女の人が読むような本かなとも思ったのだけど、なかなかおもしろかった。OLでもどんな仕事でもどんな人間でも、ふとしたきっかけで急に人生は変わるのかもしれない。その1歩を自分で手に入れられる人もいるし、チャンスがあっても生かせない人もいる。失敗もあるけど、それでもいつかうまく進む感じもする。どんな人の人生もジハード、聖戦なんだよね。