七つの黒い夢

七つの黒い夢 (新潮文庫)

七つの黒い夢 (新潮文庫)

ホラーかと思っていたのだけど読んでみたら違った。こわいというよりちょっと暗い感じの話。そういう7つの短編集。
「この子の絵は未完成」は乙一の作品。幼い息子は思い込むとそれが現実になるという超能力のようなものをもっている。縞々の服と一緒のほかの服を洗うと、他の服も縞々になるとか、カレーの絵を描くとカレーの絵がカレーの匂いを発するとか。そんな非常識を母親は隠してこわがっている。だから、絵を描くのをやめさせようとしている。
「赤い毬」は恩田陸の作品。家にある赤い毬で生まれたときに存在しなかった祖母と毬つきをした不思議な記憶。
「百物語」は北村薫の作品。居酒屋で飲んだ後輩は夜に熟睡するとなぞの怖いものに変化するらしい。その正体は誰も知らない。だから、主人公の家に来ても寝ることができない。寝ないために百物語を話し始める。ろうそくはないので家中の電気や電化製品をつけて、その後に話が終わるごとに電源を切っていく。
「天使のレシート」は誉田哲也の作品。コンビニで働いている憧れの人、天使恭子。受験勉強に悩む主人公はう偶然土手で天使さんに悩みを話す。将来は宇宙の果てを発見したいという純粋な夢、しかし、数学が大の苦手でかわりに文才があること。天使さんは本当に神の使いの天使だった。宇宙の果てを発見するのは神の意思にそむくので、やめさえなけらばならない。主人公は未来的にその発見をしてしまう予定になっている。それをくずすために天使恭子は地上に人間としてつかわされた。しかし、悩みを聞いてしまったために任務の遂行ができなくなってしまった。神にそむこうとしたので自殺させられてしまった。本当は主人公の妹を殺すことで科学者から医者へに道へ切り替わるので、妹を植物人間する使命を背負っていた。天使さんが自殺したことを知った主人公はその面影のどこかに発見するために天使さんの趣味のカラスの餌付けをひきつぐ。それを妹に見せようとすることにより、妹が2階から落ちてしまい、神の筋書きどおりになりました。
「桟敷がたり」は西澤保彦の作品。盛り上がらない同窓会を抜け出し、女だけで2次会、3次会をした。その後、東京へ帰るときに飛行機が爆破テロ予告により、運行中止になる。同じときに友人もいたずら電話により東京に旅行に行った両親が危篤だと聞き、東京に向かおうとするがこの飛行機の運行中止で大変な状況になる。その友達と自分のところにいたずら電話のようなものがかかってくる。携帯のストラップがうさぎだから死ぬという電話。友達も同じようにいたずら電話がこわがらされていた。でも、それは昨日の同窓会をすっぽかされた男のいやがらせのような気がする。
「10月はSPAMで満ちている」は桜坂洋の作品。会社を辞めて新しく派遣登録したあやしげな会社。そこはスパム広告をつくる会社だった。ビルの下でえらそうにしている猫にえさの魚肉ソーセージを与えているのは誰か?会社の事務の人と隣の海洋研究所員、近くに引っ越した会社の社長。怪しげな人はたくさんいる中で意味のあまりない問題に巻き込まれた主人公の話。
「哭く姉と嘲う弟」は岩井志麻子の作品。嫁いでしまった姉はとても美人だった。昔にしてくれたちょっとこわい話を今でも覚えている。そんな昔を思いだしている老人の話。

「10月はSPAMに満ちている」と「天使のレシート」が好きかなぁ。30分ドラマにちょうどなりそうな感じがする。
基本的にどの話も最後が解決していない感じにしているような感じ。