輪廻

輪廻 (角川ホラー文庫)

輪廻 (角川ホラー文庫)

映画はそれなりに興味があったものの見ていません。でも、主題歌の扇愛奈の「輪廻」が好きで買ってしまったくらいなので、小説の方も買いました。

主人公や35年前の殺人犯や木下弥生など時代をいったりきたりしながら、話が進んでいく。挿入話として、生まれ変わりの事例の紹介がある。
主人公は、売れない女優の杉浦渚。手の甲にwのあざがある。ある映画のオーディション以来、人形を抱いた小さな女の子を見るようになった。その子が電車に轢かれたり、ドアの前にいたりするようになる。そのある映画は45年前の群馬県のホテルでの11人の謎の無差別殺人事件を題材にしたものだった。オーディションでの態度は失敗だったのだが、監督からイメージに残ったらしく出演が決まる。
35年前の殺人犯は大森範久といい、心理学者だった。自分の娘の背中とひじのあざや言動から幼くして死んでしまった妹の生まれ変わりだと確信する。ほかにも同じように生まれ変わりがないかと日本中をとびまわり資料をあつめる。学会に提出する証拠の実験として焼印を押したねずみを大量に殺し、業者から焼印のあざのあるねずみが生まれたことを報告してもらったりした。生まれ変わりの確認ができたので、次は人間で実験することにし、群馬のホテルを場所に選んだ。自分の子供たちも連れて行き、ホテルの従業員、宿泊客を殺し、そして自分も自殺する。その全員には後で確認できるようにwの傷を残した。殺していく途中に、自分は大昔に狩猟民のリーダーで殺しを仕事にしていたなどの前世の記憶を思い出すが、それは本当に前世の記憶なのか、この殺人のための大義名分なのか分からない。
渚は映画の撮影中も何度も奇妙な体験をする。撮影の場面なのに、イメージ用に俳優に死んだ人の場所で同じポーズで写真をとると血が見えたり、35年前のホテルにタイムスリップし殺人犯に追いかけられたり、小さな女の子が死んだ押入れに隠れてしまったりする。そして、自分がその少女の生まれ変わりではないかと思うようになる。
木下弥生という大学生がいる。いつも赤い三角屋根のホテルを夢に見る。それが最近よく続くようになりいろいろ調べ始める。小さい頃には、「本当のお母さんとお父さんに会わせて」などの前世の記憶の話をしている。同じような前世の記憶のある女性に会ったりもする。木下弥生にも、前世の記憶のある女性にも手にwのあざがある。同じ時期にトラックの運転手や茶髪の高校生男子など手にwのあざのある人間が、人形を抱いた女の子を見たり、「ずっと一緒だよ」という人形の言葉を聞き、不思議な死に方をする。
渚の撮影では、そのwのあざのある死人たちがホテルに現れて、どんどん自分の前世の人間の死んだ場所に行く。wのあざのある人たちはホテルの従業員や宿泊者の生まれ変わりだった。しかし、その死者たちが渚を追いかけてくる。映画の監督は殺人犯の息子の生まれ変わりだった。だから、映画をとろうと思ったようだ。そして、自分の同じように死んだ場所に向かうとそこには、すでに木下弥生が死んでいた。自分は少女の生まれ変わりではなかったのだ。では誰なのか?死者たちの恨みがましい目、自分は殺人犯「大森範久」の生まれ変わりだったのだ。

映画が先で小説化が後だったのでちょっといまいちな感じがした。ホラー的な人形のセリフが何度も繰り返されるのは仕方ないとしても、生まれ変わりの人たちが前世で死んだ場所に行く場面などで、「茶髪の人、トラック運転手、…」と全員を繰り返す描写が何度もあったのがくどかった。あとは、ホラーだからなんでもありとはいえども、ホテルで殺人事件の関係者がすべて同じ時代に生まれ変わりとして出現するのはちょっと不満があった。
でも、機会があれば映画も見たいなぁ。少し前にテレビ放送があったようだけど見逃したのが悔やまれる。