シーズ・ザ・デイ

シーズ・ザ・デイ

シーズ・ザ・デイ

けっこう読書というものにのめり込むきっかけともなった鈴木光司。この人の本を読むのは何年ぶりだろう。さすがにエッセイなんかはあんまり読む気がしないんだけどね。好きな作家さんも増えて、忘れたりしちゃうんだけど、読むとやっぱり文章うまいんだよね。

主人公は、ヨットやクルーザーを売っている会社の営業員の船越達哉。妻は司法試験に合格し、これを機に人生をやり直すために、船越と離婚をする。マンションは売り払い、友人に売ってもらったクルーザーで生活を始める。そのときに2つの事件の発端が起こる。
1つは、昔の恋人の月子から電話がかかってきたこと。もう1つは、昔のクルーズで沈めた船が見つかったこと。
月子の電話によると昔、堕ろすはずだった子供は堕ろしておらず、その娘が家出をしたと連絡が来た。船越は自分に娘がいたことに驚く。しかし、調査によるとちょうど船越の近くにいるということで、クルーザーの試走がてら会いに行く。娘は、15歳という若さで塾の講師の子供をみごもってしまい、自分で生むために家出をしたのだという。その状況を深く話し合おうとした時に、月子が現れ無理矢理連れ帰ってしまった。
沈めた船は、その場所が分かり、それを友人の娘が地図を持ってきてくれた。それは月子とも一緒にいったクルーズで、太平洋横断という船越の夢も積んでいて、原因の分からない事故のまま沈んでしまった。船には、当時月子よりも心惹かれる朝代という女性が一緒に沈んでいる。
娘は陽子という名前で、月子に連れ戻されたものの、また家出をする。地図をくれた友人の娘に「陣痛が始まった」と連絡が入った。そこは沖縄の無医村なので、助産婦を連れ駆けつけたのだが、子供は出産後4時間あまりで死んでしまった。その失意の状態の陽子は家に帰すわけにはいかず、船越と暮らすことになる。高校進学も悩んでいるので、この機会を生かし、船越はヨットと英語に関する知識を叩き込み、叶わなかった太平洋横断と沈船捜索をすることを決断する。陽子はどんどん成長した。
そして、クルーズにでる。沈船捜索は地図をくれた娘も同行するが、そのフィジーまでの道行きは、船越と陽子の2人となる。途中、昔の太平洋横断と同じ航路をとり、パラオによる。そこで母親の月子のことなどを話す。そこで台風の中を陽子は1人で徹夜で舵をにぎった。
フィジーに着き、沈船捜索を始める。朝代の防水バッグと骨をひきあげた。船越には、罪悪感などのいろいろな思いがよぎる。防水バックには朝代を思い出すいろいろなものがはいっていた。その中には、朝代の父親が朝代にあてた手紙が入っている。これは海の男らしくいつ死ぬか分からないので遺書代わりに渡していたのだという。父親が死ぬまで開けてはいけないということを破り船越は開けるが、開けた瞬間に朝代の父親の死を感じた。もうこの世にはいないのだ、と。
朝代の父親の手紙には、自分の人生が書かれていた。朝代の父親は実は、船越の生まれる前にいなくなった父親と同一人物だった。家族を捨てたわけなどが書かれていた。朝代が自分の父親が船越に似ていると話したことがあった。これは血のつながりだったのだ。
月子の娘が同じように妊娠して自分で生もうとした陽子のように、陽子が自分の父親を知らないままだったように船越も自分の父親をしらないまま、このように血のつながりがどこかにある。
沈船捜索を終え、いよいよ太平洋横断というところで、船越は陽子1人で行くように指示する。太平洋横断の最年少記録をつくれと。今しかできないことをやれと。機僕の未来が待っている。

鈴木光司の作品は、大体読んでいます。やっぱりホラーで有名ですよね。でも、ほかの作品にも共通するのだけど、水(海)と血のつながり(連鎖)的なものが主題なのかなぁと思います。この作品のように希望に満ちて終わることも少ないけど、良くも悪くもつながっている感じがします。