虚航船団

虚航船団

虚航船団

ボックス入りで筒井康隆の本なんて買うしかない。そんな理由で買いました。

1部は、文房具達が宇宙船に乗っていてその紹介。どの文房具も狂っていて、病的な症状を示す。人の命令されると操縦のできなくる輪ゴム、死体愛好者の墨汁、人と話すときは第3者を介してしかも自分が皇帝のような扱いをされたしゃべり方で話しかけられないといけない消しゴム、自分の数字のカウントばかり気にしているナンバリング、日付を忘れた日からずっと落ち着かない日付スタンプ、責任の所在ばかり気にする赤鉛筆の船長。この文房具宇宙船は船団の中の1隻で、ついに命令をだされる。それは鼬の惑星の鼬を全滅させること。
2部では、鼬の惑星での鼬たちの歴史が書かれている。人類をそのまま鼬に変えて歴史的には人類の半分で進化している。この鼬たちは元々、犯罪者を流刑にして惑星に居住させたもの。哲学を考え出して、封建社会として王様をつくり、蒸気機関を考え出して、産業革命を起こし、ついに核戦争まで起こす。人類の歴史そのもの。偉人の名前も全部鼬に置き換えている。スターテン、クズレオン・クズパルトなど。日本は、エコノスという島にされていて、ここはドイツの性格ももつ。
3部は、文房具が惑星で殲滅作戦を開始する。生物兵器、レーザー銃などの科学兵器を使い、鼬を圧倒していく。しかし、24億も存在した鼬は地下に逃げたりして戦い続ける。そのうちに文房具たちも兵器のエネルギーが尽きたり、仲間割れしたりで鼬に食い殺されていく。そして、殲滅させることができぬまま全員戦死してしまった。ここで開放されたことにより、狂気からやっと開放された文房具も存在したのにだ。
そのまま、後半は筒井康隆本人の生活などが入り込んでくる。そして、小説と現実の境が曖昧になっていく。

この本は、本が好きじゃないと読んではいけません。まず、段落が変わる部分が少ないし、句点もすごく減らしてある。だから、読みにくいことこのうえない。でも、それは著者の意図だと思います。さすがに僕も苦労して読んだ。
すごくいろいろ調べたのだと思う。人類の歴史を最初からやり直して、ちょっと変えて書くのも中々難しそうだ。文房具たちの狂い方もここまで極端ではないが、人間の誰もがどれかの文房具の症状に当てはまるような気がする。