スカイ・ハイ

スカイハイ

スカイハイ

あの「お逝きなさい」のスカイ・ハイの小説版です。漫画も全種類持っているので、やっぱり読んでみるしかありません。原作は漫画です。小説の第1話は「ヒトソダテ」は漫画の方でも第1話だった気がします。第2話の「骨」は、小川智子のオリジナルの話です。
「ヒトソダテ」は、17歳の高校生の男の子とその両親の話。母親は教育ママで息子を思うように操っていた。父親は子育てには協力せずに、お金を稼ぐということだけが子供のためとがんばっていた。その息子が大学受験になり、東京で暮らすことになりそうなので、母親はそのために自動車免許を取得する。誕生日祝いでレストランで食事をすることにして、大雨の中を高速道路を車で走っているときに事故にあった。両親には死に、息子だけが生き残った。そして、両親は恨みの門に両親はたどりつく。
恨みの門には、門番のイズコという女性がいる。恨みの門にくるのは、不慮の事故や殺された者が来る。そして、12日間の間に3つの中から選択することができる。「1つ目は、このまま天国に行き再生を待つこと。2つ目は、霊のままで現世を永遠のさまようこと、3つ目は誰か1人を呪い殺すこと。しかし、呪い殺すと自分の地獄に落ち、永遠の苦痛を味わう。」
この両親は、息子の行動を12日間見続ける。夢では両親をずっと殺していた。両親からの開放を願っていた。ずっといい子を演じ続けていたことに苦しんでいた。そして、両親が死んで開放されると、残虐性も開放され、飼い犬を風呂場で溺れ死なせる。その後、ホームレスをカッターナイフで殺してしまう。
両親はその姿を見て、やめさせなければと思う。今更説得しようとイズコに現世に戻すことをお願いするが、手遅れだと言われる。今後も人殺しをつづけないように、自分たちで呪い殺してやめさせることにする。1人の人間を殺すのに、2人の魂はいらないので、息子の更正を強く願っているほうが殺すことになる。そして、父親が呪い殺した。
1人残った母親は、来世では同じ過ちを繰り返さないように誓いながら、再生するために門をくぐる。イズコは最後に「子供を育てる前に、今度は自分自身が育ちなさい」と声を掛ける。
「骨」は、軍人の兄とその弟と兄の想い人とその孫の話。
第2次世界大戦で出征した兄は、死亡届が来たまま帰ってこなかった。その兄は想い人に鍵のかかった桐の化粧箱を預けていった。鍵は兄が持ったままで、それは絶対に帰って来るという誓いだった。死んでもこの鍵は放さない。
戦後50近くがすぎ、その兄の骨は八丈島沖で見つかった。手には鍵を握ったままだった。弟は70歳という年齢になっていたが、兄の骨を辛抱強く探していた。桐の箱には、金の弥勒菩薩が入っていると信じていたのだ。鍵が手に入った今、箱を手に入れなければいけない。しかし、想い人には近づけないので、孫に近づいた。
そして、想い人も高齢でなくなった。孫に箱を探してもらい、中を開けると兄の婚姻届が入っていた。戦場から帰ってきてからプロポーズするつもりでいたのだ。願いは叶わなかったが、孫と弟の手により、骨の一部だけが一緒にされ海に葬られた。
恨みの門にたどり着いた兄の魂は、最初はアメリカ兵を殺そうとしたが戦争は終わっていて、その想い人を虐げただんなさんを殺そうとしたが、それも病死していた。その旦那と想い人の孫を、血のつながりから汚く思い殺そうとするが、想い人に似ているのでそれもできなくなった。最後には、金の弥勒菩薩のためにずっと生きていた弟を殺そうとするが、ずっと自分を待っていてくれた想いからそれもできなくなる。そして、最後に再生の道を選ぶ。戦争ではなくても、また生まれた世界で、悪意とずっと戦い続ける、と。

漫画を小説版にした方は言うまでもなく、オリジナルもよかった。漫画として絵として浮かんだ。ここからまた漫画にするにも簡単だと思う。戦争を題材にするのは、ありがちだし、感動を生む意味では少々卑怯だと思うのだがそれえでも良かった。人間には誰にでもそれなりの事情があり、理由があり、簡単には殺せるものではないと思う。