λに歯がない

λに歯がない (講談社ノベルス)

λに歯がない (講談社ノベルス)

森博嗣です。Gシリーズ、ギリシャ文字シリーズの第5弾です。
海月、山吹のゼミが研究に使わせてもらっている研究所の建物で殺人事件が起こった。出入り口には開閉記録が残る装置がつけられ監視カメラもあり、2階の窓は隣の建物が間近に迫っているので人が通り抜けることができないという密室状態。そこで身元不明の浮浪者4人が拳銃で撃たれ、歯を抜かれ、ポケットに「λに歯がない」というカードを入れられた状態で殺されていた。
海月、山吹は事情聴取をうけ、事件についても知るために西之園にも話をすると、加部谷も首をつっこんできた。まずは、カメラや開閉記録などのセキュリティを疑う。他の可能性として、大きな荷物の中に入り潜入して、犯人はまだその中に潜んでいるなども考える。ギリシャ文字の一連の事件と考えると自殺の可能性も考えられるので、4人の中に犯人がいて自殺ということも考えたが、死後に歯が抜かれているので無理ということになった。もちろんギリシャ文字シリーズに便乗した偽装殺人事件の可能性もあった。
赤柳初朗探偵が、なぞの人物と会い、情報を仕入れる。このとき、赤柳が保呂草と面識があることがわかる。この情報とは、1年前に保呂草が鍵をあけた宝石店があり、そこを保呂草じゃ4人組が泥棒をした事件があった。逃げる途中に交通事故で田村香という女性を殺してしまった。そのときはハンドルに歯をぶつけ歯が全部折れてしまっていた。そして宝石は投げ出し逃げたのだった。しかし、そのときの珍しい宝石がオークションにでた。実は研究所の所長がそれを持っていたのだ。研究所の所長は実は田村と恋人関係にあり、その復讐として4人を殺し歯を抜いたのだった。
トリックとしては、建物は免震構造の実験のためで横にスライドするようにできていた。そして、スライドした状態だと2階の窓が人を出入りするぐらいに空くのだ。それに気づいたのは、海月が地下の様子を見学して思い浮かんだのと、西之園に相談を受けた犀川が研究所の所員の机が誰かに開けられたという時に証拠として測定器をとりつけたことにより分かったようだ。
いつもどおりのそれなりのおもしろさだった。満足。ただ今回は謎の人物がでてきて情報をくれたりしていて、森博嗣の作品は他のシリーズとの関連があったりするので誰だったのかよく分からない。真賀田四季博士がこのギリシャ文字シリーズの事件を裏で操っている部分があるのだが、今回も裏に絡んでいたのかが微妙に分からなくなっている。ただ所長に情報を与えた人物などが四季博士と関係があったようだ。でも、所長が「λに歯がない」というカードを入れたのか、今回のλという文字は何を、または何のグループをあらわしているのかがまったくわからない。そのうち、森博嗣の作品は人物関係図などを見ながら読み直さないといけないなぁと思う。