鍵のかかった部屋 第1話「佇む男」

窓には鍵がかかっていて、ドアは遺体とテーブルとソファーで固定されることにより開かなかった。通風口も小さすぎて人が通れなかった。つまりこの部屋は密室だった。これは自殺なのか、自殺に見せかけた他殺なのか?


芹沢総合法律事務所のビル、ロビーには青砥純子(戸田恵梨香)が待たされていた。受付の案内されて芹沢(佐藤浩市)の元を訪れた純子。今日から働くことになっているらしい。そこでさっそくお客さんの話を聞いてくるように命令された。その間に芹沢は弁論を済ませて、朝日銀行の仕事が入っているらしい。
純子はホテルのラウンジでにっせん貿易の丸山社長にあうと個人的な相談事をされた。新日本葬礼社の大石社長が自殺をしてしまったが、誰も入れない密室で自殺をしたらしく、気になることがあるらしい。日下部は新日本葬礼社の業務担当をしているが、大石社長から遺言の書き換えを命じられた。遺産は唯一の身寄りの池端専務に相続するつもりであったが、池端専務の横領が発覚し、書き換え直前に自殺をしてしまったらしい。さらに妙なことに自筆の遺言状が残されており、それは元々公式の遺言状とほとんど内容が変わらないものだった。しかし、警察は部屋が密室だったので自殺としか考えてくれないので、調査を依頼したいということだった。
純子は依頼を受けたことを朝日銀行で芹沢に伝えたが、なんでも話を合わせればいいわけではないと怒られてしまった。銀行の大金庫には絵画や貴金属などが総額200億くらい納められている。金庫の中で確認する芹沢、外で待つ純子。係員がいなくなった時にボタンが気になった純子はボタンを押してしまった。そうすると鈍重な扉が閉じてしまった。これは次の営業日までは開かないらしく、今日は金曜日なので月曜日まで芹沢たちは閉じ込められることになってしまった。緊急時には2つの扉を開けるダイヤル番号があり、1つは係員が知っているが、もう1つを知っている頭取は今閉じ込められてしまっていた。
業務が止まり混乱状態になったところに、1人の男が来てダイヤルを動かし始めた。男は東京総合セキュリテイの榎本(大野智)と名乗った。連絡を受けて鍵を開けにきたらしい。帰れという係員を無視して榎本は作業を続ける。中では芹沢と頭取が酸素の量を気にして静かにしていた。榎本はしばらく動かした後、パソコンで重くなった部分の数字をグラフにして解析をしていた。ディスク錠の仕組みや好きな数字を設定できる仕組みを話すが、意味がわからず話を遮る純子。作業を続けるとカチッという音と共に榎本が立ち上がった。謝る榎本だったが、それは思ったよりも手間取ったからであり、扉を開けることには成功していた。時間は17分だった。扉を閉めた純子を芹沢は然り、頭取は鍵のセキュリティを心配していた。
銀行をでた芹沢には、純子は大石社長の死んでいた奥多摩の山荘に行く約束を話した。密室のせいで自殺ということになっているので、密室じゃないことを証明すればいいと言う純子。警察の意見を覆せないと芹沢は言うが、そういうことの専門家を連れていけばいいと提案する純子。帰ろうとしていた榎本を捕まえ、密室の謎を解くことができるかと質問すると、それがもし他殺であるならば破れない密室はないと榎本は答えた。
奥多摩の山荘に向かう車で日下部は遺体発見の3日前から連絡がとれないことに嫌な予感を感じていた。大石社長はよく山荘にこもることがあるので大丈夫だと池端専務は答えたが、無理をいって日下部は山荘を確かめに行ったらしい。芹沢は榎戸の用事などを気にしたりなどとにかく早く帰りたい様子だった。山荘の鍵は1つは社長が持っていて、もう1つの鍵は会社の金庫に保管されていた。金庫を開けることができるのは池端専務と秘書の田代さんだけだった。
日下部が訪れた日は鍵がなくて中に入れなかったらしい。外から様子を伺うとカーテンがしまっていて中に社長がいるのが見えた。窓を割り中にはいると、葬式の飾りがあり、自殺に使われた塩酸モルヒネと注射器、自筆の遺言状があり、ひどい臭いがした。
純子たちは割られた窓を確認する。ドアにかかっていた白幕はゴミ袋に保管されていた。膜を広げ確認する榎戸。遺体はかなり腐敗して顔が晴れていて、口からはウジが湧いていた。社長は心臓の痛みを抑えるために塩酸モルヒネを自分で打っていた。社長は葬儀専門の遺体処置技術者のエンバーマーの講習をうけていたので、注射器の取り扱いもなれていた。榎本が窓の鍵などを確認している。芹沢は自殺と断定するが、日下部は池端専務が殺したと断定した。後々報告をすると部屋をでていった芹沢だったが、榎本はまだ考え込んでいるようだった。
山荘を後にし、純子は1人で部屋の絵を書きながら考えていた。芹沢は自殺の報告を電話しようと考えていたところ、順このところに榎本から電話がかかってきた。榎本の会社を訪れたが、榎本はここにはいないと言われてしまった。地下の備品倉庫室にいると聞き訪れてみると、榎本は1人で江戸時代の蔵錠をいじっていた。昔や世界のいろんな錠や鍵の説明をする榎本。本題に入ることを芹沢にうながされると、榎本はどこかへ行ってしまった。その間純子は余計な鍵を触り手錠がはまってしまった。榎戸は縮尺の正しい模型を持って戻ってきた。まだ自殺かどうかは分からず今から考えるらしい。
部屋はドアが遺体で塞がれ、窓は鍵がかかっていたので完全に密室だった。窓のがたつきがないので、外に出てから振動などで鍵をかけることはできない。クレセント錠でロックがかかっていたので外から鍵をかけることは不可能。でも自殺とは考えにくいと榎本は言う。ドアの白幕は100本近い画鋲で固定してあり、脚立を使いそれをするのはかなり重労働であり、死期の近い老人のやることとは思えない。さらに20キロのガラステーブルが移動されていたり、遺言書など不自然な点が多すぎる。窓は無理なので唯一の可能性としてのドアの検証に入る。ドアは幕のせいで大きく開けられないが、白幕にたるみがあるのですべりこんで外にでるくらいはできる。しかし、この方法だと廊下にでてから遺体を動かすしかない。遺体の腰をひもでしばり、廊下にでてから引き寄せる方法があるが、その方法でガラステーブルやソファーまで動かすのは無理がある。ドアを外す方法は隠し蝶番のせいでできなかった。行き詰まってしまったが、榎本はこれまでとは別の次元の発想が必要だといった。
東京総合セキュリティからでてきた芹沢は、この件から手を引こうと純子を説得にかかった。しかし頑固にはねのける純子。時間の無駄なので嫌がっていた芹沢だったが、あと1日だけとすがる純子になんとか納得した。
聞きこみをする純子。自筆の遺言状の筆跡の確認をしたが、社長は手がふるえるので鑑定は微妙だった。遺言状は公表されておらず内容を知るものはいなかった。会社が傾きかけた時に池端専務が2千万の保証人になったという話は事実だったが、それを知っているのは大石社長と池端専務だけだった。密室の件は難問だと日下部に報告した。モルヒネは致死量の数倍が検出されたらしい。これにより犯人も注射の心得のある人物と推測される。その時に秘書が池端専務が社長に注射しているを見たことがあると思いだした。池端専務もエンバーマーの資格があることがわかり、日下部は池端が犯人であると確信した。
山荘の近くでも聞きこみをする純子。雨が降り山荘に戻ると榎本が現場に来ていた。山荘をのぞいている子供がいるので声を掛けると、子供は白髪の男の人が窓からドアの前に立ってこっちを見ていたと言った。
大石社長の葬式で子供の証言を芹沢に報告し、池端専務が白髪であることを伝えた。池端専務を指さし子供に見たのはあの人かと聞くと、そうだよと答えた。純子は直接池端専務に話をするために近づいた。近くに行き再度確かめると子供はこの人ではなく、遺影の大石社長だと言った。何事かと池端にいわれ、この度はご愁傷さまでしたとごまかす退出する芹沢たち。
再度、倉庫備品室で検証に入る3人。遺体をドアの上側から吊り下げるのは白幕のせいで不可能。部屋の空気を変えるために窓をあけると、ハエが入ってきて榎本は何か思い当たった。人間にわかるもう1つの次元は時間だと言いながら、親指と人差指を擦り合わせた後に鍵の開いた仕草をして、なんで気づかなかったんだと密室が破れたことを告げた。それは明日話すと言った榎本に対して、芹沢は時間の無駄だと怒りだした。
翌日、新日本葬礼社を訪れると池端専務は山荘を片付けると鍵を持って出掛けていた。急いで追いかける芹沢たち。山荘で池端専務と対面する。池端は警察が自殺と断定したと帰らそうとするが、榎本が密室の謎を解明すると純子は言った。榎本はもったいぶったわけではなく法医学の面で確認事項があったらしい。発見した遺体からの口からウジが湧いていたというが、ハエの卵が孵化してウジが湧くまでに最短で半日はかかる。窓を割る前にハエがいたことになり、密室状態のこの部屋にハエがどうやって入ったかが問題になる。通風口もドアの隙間も入れないようになっている。しかし、社長がなくなったあとにこの部屋は1度開けられたと考えることができる。密室が途中で破られたわけではなく、それまではまだ自由に出入りができ、密室が完成したのはドアが閉ざされさらに長い時間が経過した後だといえる。事件のキーワードは時間。
山荘には後継者問題に悩む大石社長がこもっていた。そこに犯人が訪れた。大石社長がガンの痛みにおちいったので、痛み止めを打つふりをして致死量の数倍のモルヒネを打って、昏睡状態になった大石社長を横たえた。この密室のポイントはどうやってドアの前に遺体を座らせたかである。実は犯人は遺体を座らせたわけではなく、遺体が自分で座ったのだ。犯人は大石社長を殺した後、ガラステーブルとソファーを動かし一旦帰っていった。12時間後に再び山荘を訪れた。12時間で部屋には臭気がたまっていてたまらず窓をあけ、その時にハエが入ったと思われる。遺体は死後硬直でかたまっていたのでドアの白幕に動かないようにテーブルで固定し、遺体がずり落ちないように廊下へすべりでた。時間がたつと死後硬直が上からゆっくりと硬直がとけていき、ドアにもたれかかりながらすべりおち座った格好になる。
証明できるのかと池端専務に言われ、子供の証言を言ったが当てにならないと一蹴された。証拠として白幕に遺体の頭が長時間ついていたのでDNAの検出ができると言った。他殺だとしても池端が犯人である証拠はないと言った。虚をつかれた池端だったが、榎本は密室が破れただけで犯人には興味ないと言った。
帰ろうとする池端を芹沢が遮った。遺言状には池端が2000万の保証人のことを書かれていたが、それは池端しか知らないことで、大石社長亡き今、あの遺言状をかけたのは池端だけだと言った。仮に遺言状が疑われたとしても密室が完璧ならば疑われないと踏んでいて勝算があった。それは間違いではなく自殺として葬儀が行われ、白幕を処分して事件が終りだったはずが榎本が現れたことにより失敗に終わったんだと言った。
ホテルのロビーで丸山社長に事件の報告をした。仕事の大きさで受けないのが主義だとうまいことを言っていた。しかし、その後純子と2人になった時に、今後企業法務以外は受けるなと念を押していた。榎本にも報酬の話をしないといけないとも言っていた。純子は榎本をすごいと言ったが、芹沢は榎本をただの変人だと言った。純子は満足に帰り道を歩き、芹沢はラジオから流れる練炭自殺の密室についてのニュースを聞き、榎本は江戸時代の錠を開けにんまりしていた。