鍵のかかった部屋 第2話「鍵のかかった部屋」

ドアには鍵がかけられ目張りまでしてある。部屋にはたくさんの紙テープが吊り下げられ、壁にはサヨナラの文字、コンロの中には練炭の燃えカス。状況からは練炭自殺に見える。最近の住宅は機密性が高いので目張りの必要性はなく、窓まで目張りをするのはやりすぎ。自殺者は用心深く完璧主義者だったからここまでやったのか?それとも他の可能性があるのか?


芹沢は自宅で優雅にコーヒーを飲んだ後に、窓をガラスを切り取られ空き巣に腕時計コレクションを盗まれていることに気づいた。榎本と青砥が状況を見て、屋上の鍵はピッキングで開けやすくロープで窓から部屋にいけるので、1階2階に続き狙われやすいらしい。対策としては窓の補強として補助錠やセンサー、保護フィルムなどが有効。ドアの鍵は最低2つ、できれば3つが望ましい。3つとも同じ鍵でもいいが、真ん中の鍵だけ上下の鍵と向きを変えてとりつけ鍵を閉めずにおくと、3つともピッキングされた場合に、真ん中の鍵は閉まることになるのでドアが開かない。そういう説明はいらないので完璧にやってくれと芹沢が頼むと、榎本は300万はかかると言った。青砥が前回の事件の報酬を榎本に話すと、あれは仕事と関係なくやったので無料でやったので、困ったことがあったときに相談に乗って下さいとだけ言って行ってしまった。
芹沢は特許の件などでクライアントと打ち合わせをするが、クライアントの腕時計の買った時期などを気にしたり、車の運転中も横切る人の腕時計を気にしたりしてしていた。そこで青砥に榎本から電話が入る。さっそく相談に乗ってもらいたいことができたらしい。
先日、相田愛一郎の甥が練炭自殺をしたらしい。遺体からは睡眠薬も検出されたらしい。しかし、相田は自殺とは思っていない。その理由は甥の弘樹は妹思いなので妹の美紀を残して自殺は考えられないという。2人は3年前に母親を亡くしている。母親のみどりは相田の姉で、父親は美紀が生まれてすぐに事故死をした。みどりは高沢という中学校教師と再婚したが、みどりが3年前に病死してしまったので、高沢が2人を引き取ることになった。事件の日は相田が弘樹のひきこもりについて相談があると高沢に呼び出され家に行ったところ、弘樹は部屋からでてこなかった。ドアが開かないので高沢がドリルでドアをやぶり、相田が鉄の棒を曲げドアの内側から鍵をはずし部屋に入った。部屋の中で目張りと練炭とサヨナラという文字と自殺の状況になっていた。
芹沢が工具箱の道具で素人が鍵をはずすのは難しいのではないかというと、相田は窃盗で5年間服役していたと告白した。芹沢が自分の家の空き巣と結びつけて問い詰めようとしたが、青砥に遮られた。他殺を疑う相田に事件の日の様子を聞くと、高沢はその日ずっと家にいて、美樹は友達と出掛けていた。他の誰かが家に入り弘樹を殺すのは不可能なので、高沢を疑っている。警察は密室なので自殺と断定していた。
榎本としては、まず弘樹を殺す動機が高沢にあるかを弁護士の職権で調べてほしいと芹沢たちに頼んだ。母親のみどりは両親から多額の遺産をうけついでいて、弘樹が死んだことによりそれが高沢に相続される可能性があるかどうか。相田は犯罪をしたので相続の権利がなく、父親とも連絡をとっていなかったので異議の申し立てもしなかった。もう1つのお願いとして榎本が自殺したという部屋を見られるように美樹に頼んでほしい。相田が頼むこともできるのだが、相田は美樹に避けられているようだ。相田は弘樹のことを考え、さらに美樹にまで危険が及ぶようなことがなくなるようにしたいと必死に頼んだ。
中学校の外で美樹を待つ芹沢と青砥。芹沢は元窃盗犯のお願いを聞くのと榎本の報酬をすぐに支払わなかったことに対して文句を言っている。帰り掛けの美樹を見つけ青砥が部屋に入れるようにお願いした。弘樹の自殺を信じない美樹だったが、芹沢は窃盗犯なので関係ないとかなり嫌っているようだった。美樹には断られたが、榎本は高沢に交渉してあっさり家に入れてもらうことができた。調査に対しても嫌な顔1つしなかった。
鍵やドアを入念に調べる榎本。芹沢は高沢の態度を褒め、あれは殺人をする人の態度じゃないと決め付けていた。引きこもりの弘樹の食事は美樹が差し入れていたらしい。自殺前も完食し、高沢の入れたコーヒーも飲んでいたらしい。コーヒーや食事に睡眠薬が入っていたことが疑われたが、すでに食器を洗っていてわからない状態だった。芹沢が自殺と決めつけていたが、青砥は弘樹の持っている勉強用の参考書などから本当に引きこもりであることを疑っていた。
その様子を気にしている美紀。帰る時に高沢の特別授業の科学トリックショーのちらしを見た。参考書を見ている美樹。
東京総合セキュリティの備品倉庫室で模型の部屋を用意して、また芹沢たちが検証を始めた。ドアには鍵がかかっていて、ガムテープではなく幅の広くて薄いタイプのビニールテープで目張りがしてあった。ドアの外から目張りするためにあえてこのビニールテープを使った可能性がある。外から掃除機で吸引して張った可能性があったが、ドアは隙間風が入らないようドアがドア枠に収納される構造になっていた。鍵も目張りにより外側からかけることができない。機械による遠隔操作の可能性もあったが、部屋に機械が残ってなく高沢さんが回収する時間もなかった。
我々にできるのはここまでだと終わらせようとする芹沢に、青砥も少し諦め気味だった。ここに遺産相続の調査の結果が分かった。遺産は母親のみどりと相田を越え、弘樹と美樹に2億円ずつ相続されていた。みどりがなくなる前は養子縁組がなされていなかったが、みどりがなくなる直前に急に手続きがされ4億円すべてを高沢が相続するようになっていた。芹沢は高沢がみどりが亡くなると知ったのでかわいそうに思い養子縁組をしたと解釈した。そして、仕事が溜まっているからと青砥を部屋から追い出した。
高沢と美樹が朝食をとっている。高沢にコーヒーをすすめられるが、それを飲まずに学校に行く美樹。不穏な空気が流れる。コーヒーは高沢によって捨てられ、高沢は怒っているようだった。高沢の科学トリックショーの日がやってきた。それを見に来た青砥と榎本。ボイル・シャルルの法則として熱せられた空気が膨張する実験を披露していた。そのほかにもいくつかの実験を見せていた。
学校の終わりに美樹が声を掛けてきた。相田がどんな人であるのか質問をしてきた。それに対し高沢さんがどんな人か榎本が聞き返した。高沢は教育熱心でユーモアもあり生徒や父兄からも絶大な信頼のある教師の鑑、それにくら相沢は窃盗を繰り返し傷害で捕まった前科持ちの最低の男。ただそれは世間的な評価なので、相沢の評価は自分で確かめたほうがいいと榎本は言った。美樹に何かあったらいつでも連絡してと言い残し青砥は帰っていった。
美紀は家でアルバムを見て、相田も含めた家族で楽しく食卓を囲んだことを思い出していた。そして、窓とドアを目張りしていたテープが何か証拠になるかもと美樹が榎本のところまで持ってきた。
後日、芹沢、青砥、榎本、相田で高沢の家を訪れた。テープを再度目張りしたり、付箋のはった教科書を見たりと検証をしている。ドアのビニールテープは窓のビニールテープと違い細かいしわがたくさんあった。窓のテープはロールから引き出しながら張ったのでしわがなく、ドアは1度だしたテープをドアからはみ出すようにはり、静電気で自然にくっつくようにしていた。しかし、榎本は今回の事件はどうやって目張りをしたのかではなく、どうして目張りが必要だったかにあると言った。自殺に見せかけるだけなら窓の目張りは必要ない。犯人は練炭自殺以上の部屋の機密性を求められていた。相田が思い出したことがあり、部屋に踏み込んだときに紙きれが風で舞い上がった。紙テープは目張りを処分する前に高沢が急いで紙テープを片付けていた。ボイル・シャルルの法則のことを思い出し、ドリルで開けた穴を気にする榎本。そこに高沢が帰ってきたようだ。榎本はまた親指と人差し指をこすりあわせ、鍵をあけるポーズをして、密室は破れたと告げた。
高沢がドアを開けて入ってきた。相田と高沢が対峙し、相田がお前が殺したんだろう、密室も静電気で作ったんだろうと言った。そこで高沢が生前みどりから聞いた相田の性癖を話し、美樹を1人の女として見ていると言った。それから守るために養子縁組をしたと高沢と言ったが、嘘つきと美樹が否定した。目張りは静電気でできたかもしれないが、どうやって鍵はかけたのかと高沢が聞いた。それに対し鍵はかかっていなかったと榎本が言った。ドアは気圧差で開かなかったと言った。エアコンを設定して2,3ど上げておけば気圧差が作れると言った。しかし、練炭では10度も温度があがりドアは吹っ飛ぶか亀裂が入る。普通はそうならないように部屋はそこまで機密性が高くないはず。今回は練炭を使い終わってから犯人によって部屋の目張りが行われた。ドアが開いた理由は高沢がドリルで穴をあけ、空気を逃がしたから開くようになった。鍵を開けたのは相田だというと、それはクローズアップマジックだと榎本は言った。5年ぶりに相田が訪れることを事件に利用する気でいた。相田のような熟練者がこの程度の錠にてこずるのはおかしく、実は錠に紙切れがまきついていたような細工があったようなことを思い出した。
ついに種明かしに入る。ドリルを錠の下にいれ低速回転して紙切れのまきついた錠をまわし、その場で鍵をしめていたのだった。鍵をあけているようなふりをして、思い込みを利用し実は鍵をしめていた。その後紙テープはドリルで切れその場に落下するはずだったが、少し残ってしまい棒がすべりなかなか開かなかったのだ。部屋中紙テープで飾ったのは紙テープの切れ端があっても不審に思われないためだった。証拠は警察が本気で調べればすぐにでてくる。奇跡的に残った紙切れの切れ端があり、これも調べればドリルで切られたこともわかると言った。これで高沢を守るものはなくなり、密室は破られたといった。
事件が無事解決し、芹沢と青砥は安心していた。ただ会田と榎本が空き巣仲間だったりしたのじゃないかと冗談交じりにいった。榎本は仕事でドアのシリンダー錠を開けていた。お客さんには鍵を落としたのなら付け替えることをすすめていた。