おトメさん 第2話「あんな嫁とは別れなさい!」

麻子はアルバムを見ながら過去を回想している。自分でも言うのも何だがいい嫁をしてきた。吉良上野介のような姑に仕え、白雪姫に毒リンゴを盛った妃のような姑に耐え、無事に2人を見送った。神様にご褒美をもらってもいいくらい尽くした。それからわずか2年で麻子は自分が姑になってしまった。しかもあろうことか嫁は夫以外の別の男と会っているようだった。厳格な姑に苦労した後に、ふしだらな嫁に苦労するようなことはあってはならないと麻子は思っていた。
美容外科の院長の名刺を見て心を決め、麻子は李里香を探す。庭にいる李里香は近所の人たちと花言葉で盛り上がってなじんでいた。色ごとに薔薇の花言葉を話していて、エロい花言葉はないのと聞かれ、李里香が色は関係なく満開の薔薇を1輪だけ贈った場合といった所で、麻子が「私は人妻よ」と口を挟んだ。
刑事たちはまだ車で行方不明の福本さんを探していた。水沢家には不信なところはなかったが、今度嫁いだ嫁だけはなかなかおもしろい経歴を持っているようだと言った。
夕ごはんは天ぷらで、麻子と李里香が一緒に作っている。そこで麻子は優太と李里香の馴れ初めを聞いた。1年前に李里香が酔っぱらいに絡まれたところを優太が助けたのだという。優太が優しいから放っておけない性格だといい、でも李里香さんもモテたんでしょうと意地悪く麻子は何度も聞いた。李理香は「結局お義母さんみたいな人が好きでしょう。いくつになっても清純で素直でかわいげがある人。お義父さんはライバルを押しのけてゲットしたんでしょうね」とやり返した。それでも麻子は「今はあなたの話をしているの」と話を戻す。話に集中しすぎて天ぷら鍋がすごいことになっていた。天ぷらくらいなら揚げられるからと李里香がやろうとすると、天ぷらも難しいのよと険悪な感じになってきた。結局麻子が天ぷらをあげ、李里香はテーブルの準備を始めた。
薔薇の花束はもらったしモテたと李里香は言った。優太は束になった男たちでヤキモチ焼かないの?と聞くと、そこまでモテてませんと返した。モテたって言わないとお義母さんが許してくれそうもないのでと李里香が刺のある言い方をすると、ふざけないで真面目にきいてるのよと麻子も怒ったように返した。イライラしながら麻子が準備をしているとまな板の上の水の入った入れ物がテコの原理でとび、天ぷら鍋の中に入って炎があがった。麻子は悲鳴を上げた。
隣の梶原家の姑は刑事ドラマを見ていたが、悲鳴を聞き隣家を覗いた。水沢家の窓から炎がゆらゆらしているのが見えた。それを家の前にいた刑事たちも見て、車から降りてきた。李里香と麻子は消火器を探す。ぎゃあぎゃあ言いながら探す麻子に李里香がうるさいと叫んだ。麻子は「私はあなたの姑なのよ」と怒ると、李里香は「私は嫁よ。だから何?」と麻子を突き飛ばしても事態を終わらすために消火器を探した。突き飛ばされた麻子はちょうどそこに消火器を見つけた。力が足りずぐずぐずしている麻子の消火器をとりあげ李里香は火を消した。結婚して25年、麻子はこんなに大きな失敗をしたことはなかったが、嫁が来た日から家は大きく崩れ始めたと感じていた。
家の前にパトカーなどが止まり、帰ってきた博行と優太も警察にとめられ家に入れてもらえなかった。消防が鎮火したというアナウンスを流した。小火騒ぎで済んでよかったということになった。刑事は出火の状況を質問した。麻子が口ごもっていると、李里香が私が天ぷらをあげていて慣れないキッチンなので気づいたら火があがっていたと答えた。麻子にはっきり答えてくれと言う刑事に、間違いないですと李里香が強く言った。以後気をつけてくださいと刑事は引き下がっていった。
李里香は放心状態の麻子に大丈夫ですかと声をかけたが、麻子は無視して自分の部屋に戻り鏡を見た。博行も部屋に入ってきて、李里香のことは多めに見てやれと麻子に声をかけたが、今回のことで李里香が正直に警察を言うような良い子だと分かって感心したとも言った。麻子も本当にしっかりしてるわよねという麻子の言い方に、博行は驚いた顔になった。
李里香は優太に部屋で謝っていた。優太は李里香が無事でよかったと言い、このボヤ騒ぎを機会に同居を解消しようと李里香に言った。李里香は約束破って出て行くと負けになるからダメと言った。優太はお袋もピリピリしているしこのままだと小火だけではすまないような気がすると心配していた。そんなに心配ならまた働きにでると李里香は言った。優太と一緒ならなんでもできると2人はイチャつき始めた。
刑事は居酒屋で李里香の経歴の資料を読んでいた。


麻子は今までよりも早く目覚ましをかけて起きた。しかし、すでに李里香が起きて掃除をしていた。優太が正社員になるのは先になりそうだし、家に生活費も入れたいから、李里香が働きにでると話を始めた。どこで働くつもりかと麻子がきくと、知り合いに頼むという李里香の言葉で知り合いがスケジュール帳のどれかの男性と思い当たり麻子は反対した。起きてきた優太が大抵の家族は共働きだしいいじゃんと助け舟をだすと、麻子は優太のために反対したと言った。少し言葉を濁してから李理香が働き始めると優太が契約社員でもいいと思い始めるでしょうと麻子は言った。そこに博行が起きてきて所帯を持ったから優太も今までとは違うとさらに助け舟をだした。博行は2人も主婦がいるとやりにくいから、曜日ごとに当番をきめればいいと提案した。優太も賛成し、李里香も期待の目で「お互い自由な時間も持てますし」とお願いした。麻子は自由な時間にひっかかりを覚え、「家にいるほど自由なことはないんじゃない?私が25年も監獄にいたの?」と聞き、博行は違うというしかなかった。
カフェで博行と優太と梶原家の旦那がまたコーヒーを飲んでいた。解放戦線に至らなかったと博行が報告すると、「懲りないですね、嫁姑はゲリラ戦争です。先進国の軍事介入は無意味にして不可能です」と梶原家旦那は答えた。そのまま戦争にたとえ講和条約に導く方法を優太がきくと、子供だろうと博行は答えた。優太は正社員になるまで子供は作らないと宣言した。子供は新たな紛争の種になると梶原家旦那が言った。そしてここからが重要で敵にとって戦争は一種のレジャーで、攻防を繰り返すことで楽しんでいる。女はその緊張感で長生きする。女は戦争で生き、男は戦争で死ぬのかと納得した。
麻子は美由紀に小火騒ぎのお詫びに菓子折りをもって挨拶に行った。美由紀は死んだ姑と同じことしてるし、鬼と呼ばれているわよと注意した。パートに出たいのを反対されて泣いたこともあり、歴史は繰り返すもの。嫁は1人しかいないのだし愛されるおトメさんにならないと老後は悲惨。否定しない、口出ししない、詮索しないの3か条を守る。嫁に嫌われると主人が亡くなった後に老人ホームにぶち込まれるわよ。我々の世代は癪だけど姑にいじめられ、嫁に嫌われる損な世代なのよと愚痴とアドバイスをした。
麻子は働きにでるのをだめといった理由を話し始めた。李里香の男性関係が派手みたいで、たくさんの男性の連絡先を見つけたと話した。私達も結婚前はいろいろあったじゃないと気にしていない美由紀。美容外科にも行っていたみたいだし、100万もするバックも持っているのはカフェのウェイトレスをしていたのにおかしいと話を続けた。梶原の姑がやばいことをして儲けていたんじゃないのと話に入ってきた。疑惑は徹底的に捜査した方がいいと姑はアドバイスしたが、美由紀がお茶もみかんもあるしと別室に追い出した。
李里香はスケジュール帳のフックがはずれているのと名刺がバラバラになっているのを見つけおかしいと思った。朝に麻子が言っていたことを思い出す。
麻子は有村美容外科の名刺を確認し電話をかけた。
博行は映画のポスターを2つの案から決めた。客の心を掴むよりも部長の心を掴むのがうまいんじゃないかと部下の一条に嫌味を言われた。まるみは博行の家の小火騒ぎを心配していたが、私たちは小火じゃ嫌ですよと冗談も付け加えた。携帯が鳴っていて奥さんからですと女の勘で当てられ博行はこわい思いをする。博行が電話にでると麻子が優太にかまいすぎでいい母親だったのかしら、私は間違っていないのかと心配していた。博行に正しいと認めてもらえ自信を取り戻し、麻子は優太のためにと有村美容外科に乗り込んだ。
麻子は受付で院長を呼び出してもらった。紹介が必要と言われ、偽名と鯖を読んだ年齢を書き、紹介者は旧姓で李里香の名前を書き込んだ。
李里香は部屋で手帳の整理などをしていた。そこに優太から電話がかかってくる。麻子が出掛けたと聞き、良かったねと言った。上司が来て契約君は昼間っから新婚の嫁さんといちゃいちゃと嫌味を言われた。付き合ったことがないから落とし方を教えてくれと優太は頼まれた。
麻子の順番が来たが偽名を書いたことも忘れ呼ばれているのに気づかなかった。呼ばれて部屋に行くと年齢のわりに若いと褒められ、どこを直したいかきかれた。カウンセリングだけということにして、ヒアルロン注射で1回20万円もかかることを聞き出した。李里香はいくらかかったのかと質問すると、その人は記録にないと院長に言われた。
おかしいと思いながらも麻子が病院をでると院長が追いかけてきた。勝手に名前を使われると営業に支障がでるので写真を李里香の写真をみせてほしいと頼んできた。携帯の写真を見せると院長はかおりと言った。院長は急に態度が変わり「かおりがどこにいるのか知っているのか?黙ってイノセントをやめてむかついていた。いくらつぎ込んだと思っているんだ」と李里香がキャバクラに務めていたことがわかった。
李里香はスーパーの外でうろうろしてからゴミ箱に何か捨てた。その様子を見ていた美由紀があとからゴミ箱をみるとバックだった。
麻子はイノセントに行くと、そこは時給2万円ももらえるところだった。ちょうど営業の準備にでてきた店員にかおりがいないか質問すると、1ヶ月くらい前に年齢的に潮時で次のいい仕事を見つけやめたと教えてくれた。熟女オーケーな場所を紹介しようかと店員がからかうと、麻子は失礼ねと怒った。気取るなばばぁと店員も怒りだした。
優太はまた契約遅い、結婚してるんだから一人前にやれと怒られていた。休憩中に麻子が職場を訪ねてきた。全く知らない人間と急に一日中にいるようになったと優太も麻子を心配していた。離婚したって新しい出会いはいっぱいあるわよと急に麻子は言い始めた。李里香のどこが良かったのかと麻子が聞くと、優太は分からないがなんとなく一緒にいたいと思ったと答えた。1年以上付き合ったのに過去のことも何にも知らないの?と麻子がきくと、本当は知り合って2ヶ月で結婚を決めたので過去のことを話す時間はなかったと優太は答えた。心配や反対をされないために相談して嘘をついていたらしい。時間なんて関係ないと優太が言うと、もっと時間があればあんな女にひっかからなかったというと、さすがに優太も怒り結婚したんだから今は母さんより李里香のことを考えると言って行ってしまった。
1人で歩いて行く李里香の後を美由紀が尾けていた。李里香がカフェに入るとそこにはイノセントの店員がいた。李里香は主婦だからとタバコはことわり、10万円くらいのお金を受け取りすぐに帰った。
博行は映画のプレゼンをし社長にこれでいこうと認められた。2週間後の京都の出張に付き合えという命令もされた。一条が悔しそうな顔で睨んでいる。博行は下請けと話をした。それからエレベーターに乗り込むと一条も乗り込んできた。一条は襟元をつかんできて、「下請けにキックバックをもらい、女社長には色目を使い、女子社員には手をだす、そんな薄汚れたやつに映画が分かるか。俺をクビにしたければしてもいいぞ」と脅して降りていった。その後にまるみがエレベーターに乗り込んできて、博行はこわくて抱きついてしまった。
麻子は夜に警察署に行き刑事をたずねた。先日の小火で火を出したのは嫁じゃなくて本当は自分だと告白した。謝ってすぐに帰った。家の前で足を止めた麻子に美由紀が話したいことがあると近づいてきたが、そこに麻子もちょうど帰ってきた。美由紀の話は聞かずに麻子は家に入っていった。美由紀が持ってきた李里香の捨てたカバンは姑に発見されていた。
麻子は今日聞いたこと、李里香が優太に黙って夜の商売をしていたことは嘘だと信じようとしていた。そこに博行から電話がかかってきて仕事で帰れないかもしれないと連絡があった。博行はまるみと浮気中だった。李里香にも優太から残業だと連絡が入った。優太は1人でいつものカフェを訪れていた。いつもの女店員に家に帰りたくないんでしょうと声を掛けられていた。
麻子はやっぱり今日聞いたことは本当のことで、立ち向かっていかないといけないと心に決めた。食卓には30年も続いた内乱バラ戦争を象徴するバラがかざられた。花言葉は「戦い」だった。麻子は結婚する前にキャバクラに務めていたんじゃないのと切り出した。李里香は真顔で「だから何?」と返した。李里香も麻子に聞きたいことがあると言ったが…。