２２、３歳くらい。
世界一透明な湖にいる。ほんとに透明で水面の境界くらいしか見えない。底や岸もあるはずなんだけど、水に入るとそこすらも透明になってしまうのは、少しおかしい。岸にいる時は、湖以外に何も見えないから広い場所ではあると思うけど、本当に遠くに何も見えないから洞窟の中なのだと思う。
その世界一透明な湖はそれなり深くて、潜ってみても全然底にいきつかなくて３メートルくらい潜って、水面を見上げた。反射している光だけが見える。ポコポコと自分の口から浮かび上がっていく泡が見える。しばらく潜ってから水面に上がる。
岸にいたはずの５歳と８歳の娘の姿が見えない。自分の娘なんだと思う。５歳の娘は湖の岸に近い部分で立っていたので、すぐに見つけて岸にあげた。湖に潜って娘を探す。ある程度潜水して探していると、上に娘を見つけた。透明すぎてまるで空中に浮いているかのようだった。泳いで近づこうとしたけど、全然距離感が分からず近づくことができない。水面に顔を出してからその付近まで泳いでいこうとしたけど、やっぱり近づけない。
その時に、不思議なことに娘が直立状態で水面の空中に浮かび上がった。白いワンピースから水滴も垂れている。目を閉じていて何も気づいていないようなので手近にあったものを投げつけた。何を投げたのかはよく覚えていない。何個か投げたものの中で、銀色のおたまが娘のおでこにあたり、娘はゆっくりと目を開けたあと、こちらに視線をなげかけてから、またゆっくりと目を閉じた。そして、直立状態のまま湖に沈んでいった。あぁ、これは死ぬんだな、と思った。
