蹴りたい背中

蹴りたい背中

蹴りたい背中

芥川賞をとったのだったっけ?とにかく話題になったのでやっぱり読んでみないといけないと思った作品。
主人公は高校生で、クラスになじめない女の子。別にいじめられているわけでもなく、ただみんなに合わせて笑うことに疲れたような今時な感じ。主人公と同じようになじめないにな川という男のこがいる。こいつはあるファッションモデルのファンというよりマニア。授業中もそのモデルの載っている雑誌を読んでいる。主人公にたまたまその雑誌を見られ、そのモデルと会ったことがあるということを話すと、家に来てくれと誘われる。家族とも離れている感じの男の子とそれを象徴する1度庭にでないといけない2階の部屋。そこには生活用具一式がそろっている。モデルに会った建物の中の様子まで地図に書いて説明してくれとお願いされる。モデルにあったことのある人に出会えたことに感動している。地図を書き上げるとにな川はモデルのラジオ番組を聴いている。部屋の中で存在感のある衣装ケースにはモデルの載っている雑誌や着ていた服、身に着けている香水など全部集められている。それを見て、ラジオを聴いている様子を見て、背中をけりたくなり蹴ってやった。あまりにもどこか憐れだったから。
そのまま、夏になり、唯一と言っていい中学の友人からはにな川が主人公のことを好きじゃないかと言われる。ただモデルのことが好きなだけなのに、「好きな人に自分のことを知ってもらいたいのだ」と言われ、温度差を感じる。4日間ほど、にな川が休んだのでお見舞いに行くと、モデルのコンサートのチケットをとるために徹夜して風邪を引いたと打ち明けられ、一緒にいかないかと誘われる。唯一の友達も誘い3人でコンサートに行った。コンサートのノリを普通に楽しむ友人と、感動した潤んだ目で見つめるにな川、そのにな川の様子を見つめる主人公。「にな川ばかり見てるなんて本当に好きなのね」とまた友人に言われる。にな川の様子を冷めた目で見つめ、恥ずかしさがないのかなどと見てるなんて伝わらない。コンサートが終わると最終バスがないのでにな川の家に泊まることになった。友人は寝てしまい、にな川と少し話す。後ろ向きの背中をまた蹴った。
すごく読みやすい小説。話も長くないし、今時という感じがして最近の子はすごく感情移入しやすいと思う。年齢を重ねたらきっとこんな作品は書けなくなるだろうなぁ。