八月の博物館

八月の博物館 (角川文庫)

八月の博物館 (角川文庫)

パラサイト・イブで有名な瀬名秀明の作品です。他の作家よりはおもしろい感じがしたので、とりあえず読んでみた。理系で科学的な難しい単語や理論のでてくる今までの話とはちょっと違いました。
主人公は亨という小学6年生。他にも、マリエッドというフランス人の考古学者、そして、未来の亨又は瀬名秀明本人(?)の視点と3つある。
亨は学校の帰りにいつもと違う道を行き、不思議な博物館を見つけた。そこは、博物館を展示している博物館で、世界中どこの博物館も、未来や過去の博物館も見ることができる。さらに展示物に触ることも出来る。案内役の女の子美羽と共にいろんな博物館を見る。これは同調という現象を応用している。地図などからそれと同じまったく同じ状況をつくることができるとタイムスリップのようなことができるらしい。だから、太陽光線や風などの環境要因が影響しない博物館などは再現が可能なようだ。
そのタイムスリップで、マリエットさんと万博会場で出会う。ここでは、エジプトで発掘したいろいろなものが展示されている。そこには聖牛アピスのレプリカ像が展示されていた。マリエットさんは墓荒らしなどから、遺跡や発掘品を守っていて、エジプトの良さを広めようとしている。遺跡で聖牛アピスの像を発見したのだが、それが一瞬後には消えてしまったので、レプリカをつくったらしい。
途中ででてくる未来の亨は、小説を書くことに対して疑問を抱いている。理系の教授としての仕事もあり、小説のために空想のことを書くと、間違いだと指摘されることにも不自由している。
亨と美羽は聖牛アピスの謎を解くことにした。レプリカから昔の姿を再現すると、そこにアピスの無念の魂が宿り、博物館を壊し始めた。これが外の世界にまで影響を及ぼすようになる。同調システムがうまくはたらかなくなりはじめ、亨と美羽もアピスから攻撃を受ける。昔のエジプトにアピスの封印のための方法を探りにいき、マリエットさんと共に発掘などをする。
この亨の小説を書いている未来の亨は、自分の知らない間に原稿がすすんでいたり、小説の中からの呼びかけなどの不思議な現象を体験する。
アピスが復活をしたいということをつきとめたが、復活することにより世界はおかしくなってしまう。アピスの謎無復活は亨が将来、小説に書き、いろんな人の心に永遠に残るように約束する。

メタ的な感じなんですね。小説を書いている自分も小説かもしれないという感じです。リングシリーズを思いだす部分もあります。パラサイト・イブとは違い、そんなに理屈にはこだわっていない感じでした。小説だから正しいものだけではなくて、創作でも良いということで。それでも、エジプトについてなどかなり調べられている。
多分、小説の存在や小説で伝えたいことは何かということに重きがおかれています。