あやし 〜怪〜

あやし―怪

あやし―怪

宮部みゆきです。100円で買ってまずそれに見合わない価値ということはない作家です。時々読みたくなるけど、少し長めの作品が多いので、読むときをちょっと選んでしまいます。
時代を特に明記されていないが、奉公とかお店(おたな)とか口入りなどにより江戸時代くらいの感じと思う。というか江戸という地名も出てきたということは確定か。その奉公したお店で起こるこわいような不思議な事件を集めた短編集。
「居眠り心中」は、悲しい物語の様子を染め抜いた手ぬぐいで心中することが流行したことがあった。それから何年か後に、大黒屋の若旦那が奉公人と恋に落ち、しかし奉公人とは結婚できないので家から放逐することがあった。それを申し訳なく思い、着物をお詫びとして送った。その着物を届けた丁稚が、着物と同じ柄の手ぬぐいで手首をしばりあって死んでいる若旦那と奉公人の死体の幻を見る。驚き怯え家に戻ると若旦那は健在だったが、ただ手首にはてぬぐいをしばったような痣が見えたという。それを不吉に考え店を変えた丁稚が後に聞いた話だと、別のおかみさんをもらった若旦那は、ある日2人で心中していたという。
影牢」は、放蕩ばかりしている若夫婦と姑の話。店は若夫婦がおさめているはずなのに、実際の大事なことは舅姑がいまだに見ている。それが若夫婦は気に食わない。舅がなくなった後、若おかみは姑を地下牢に閉じ込めてしまう。若夫婦には、両親が違う子供が4人もいた。そして、拾った捨て子も1人いた。その捨て子をほかの子供がいじめていた。それを知った番頭に「お千代(捨て子)の仇は私が晴らそう」という姑の声を聞いた。その後、子供たちは猫いらずで死んでしまう。そのとき、子供たちには姑の怨霊が見えていたらしい。
「布団部屋」は、優秀な奉公人ばかり集まるお店の話。その家に取り付いている霊が旦那を早死にさせ、奉公人の魂を抜いていくという。しかし、ある奉公人は家族への思いの強さのため魂を抜かれることがなかった。それでも死んでしまった奉公人の霊が、その妹が同じ店に奉公にきたときに妹を守ってくれた。
「梅の雨降る」
「安達家の鬼」は、隠居した大おかみと鬼の話。大おかみはまだ奉公人をしていた頃、ある村で病気や災厄を押し込めた家で鬼にあった。その鬼は大おかみにずっとついてきていて、すべての人に見えるわけではなかった。見る人の心をそのままうつすものとして鬼はほかの人に見えるらしい。そのためにお店と取引する悪い人には、鬼はおそろしい姿で見えるのでそれを指標にして取引をしていたのでうまくいっていた。大おかみが亡くなるときに、若おかみにその話をするが若おかみには鬼が見えなかった。それは恋もせず人を憎みもせず、人として生きてきていなかったからだという。ただ最後に家をでていく鬼の悲しそうな姿を目撃する。
「女の首」は、声をださない捨て子が自分の本当の両親に出会う話。長屋で暮らしていた小僧が、縫い子として奉公することになる。しかし、その家のある部屋で唐紙にうつった生首を見て以来、怨霊に殺されそうにあんる。その女の首はほかの人には見えない。だんなおかみの夫婦には見えていた。その首が見えるということは、自分たちの本当の子供だと分かった。その首の女は昔、旦那をうらんだ奉公人だったのだ。
「時雨鬼」は、男のために店をうつろうとしている女中が、世話になった口入屋にあいさつに行き、そこであった女から聞いた鬼についての話。その女はちょうど口入屋を襲っていた強盗一味の1人だったのだけど、悪い男にだまされそうになっている女中に人間の皮をかぶった鬼がいるからだまされてはいけないと説く。自分が鬼のようになってしまったことを悔いている女が、同じ境遇にならないように女中を救おうとしていた。
「灰神楽」は、1人の女中が火鉢の幽霊にとり憑かれて殺人を犯して、その後死んでしまう。火鉢に疑問を持った役人が家に火鉢を持ち帰り、様子を見たところ幽霊が見えたので、知り合いの住職に供養してもらった。灰神楽というのは、火鉢の炭に水をかけて、灰が舞い上がった様子のことらしい。
「蜆塚」は、口入屋に何十年に1回同じ人が来るという謎をあつかったもの。年もとらず死にもしない人間がいて、その人が良いと思った口入屋や奉公先に何度も働きに来る。口入屋はその謎について、先代の碁敵に話を聞き調べ始めた頃からおかしくなり死んでしまう。その死んだ場所が、蜆のとれる堀だったので蜆に取り殺されたのじゃないかと噂がたち、蜆のような形にした塚をつくり奉った。
なんともまとめにくい、説明しにくい話が多かった感じがする。今回のまとめ方はあまりに下手だ。自分自身はなんとなく思い出せるからまぁいいや。
鬼が関係する話は、鬼が悪いものというよりは何か悲しい感じがするものばかりだった気がする。だから、単純に霊がでてきての話よりも鬼の話のほうが好き。