僕はモンスターになる

20歳くらい。
ドアを開けると殺人事件が起きそうな雪山のペンションみたいだった。右手のドアを開けると、フローリングにテーブルにある場所で何人かが談笑している。でも、僕は事態が非常にまずいことだけが分かっていた。なんでまずいのかはよく分からない。
右手のドアを無視して廊下を進むと板張りから、急にリノリウムになった。開け放たれたドアが両側にあって、ますます病院みたいな雰囲気がでてきた。突き当たりの右手のドアを入ると、中学時代の同じクラスの比較的頭のいいおかっぱの女の子がいた。ベッドで寝ているが、怪我したり病気をしているわけではなくて、ただの休憩室らしい。窓の外を眺めると階段をあがったわけでもないのに、3階くらいの高さで海と砂浜が見えた。公民館が見えて、そこに近隣の人が逃げ込んでいた。
急に場面がうつりかわり、公民館の近くになった。迷彩服に身をつつみ、なんか特殊なライフルを持って、近隣の住民の避難を誘導している。命の危険をおびやかすほどのモンスターがいるらしい。その時、近くの木の塀の上をさっと影がよぎった気がした。そして、気を失った。
目を覚ますとさっきの病院のような建物のベッドにいた。さっきの女の子が側のいすに座っている。女の子によると、どうもモンスターの攻撃を受けたのだけど、近くの兵士が助けてくれてなんとか病院まで運んできたもらったらしい。少し足と背中に痛みがあるのだけど、気を失うほどの傷でもないように見える。その時にこの建物がモンスター群の襲撃にあっているという情報が聞こえてきた。応戦するべく近くのライフルを手に取り、廊下にでる。すでにいくつかバリケードが組まれている。それでも入り口付近で食い止めたいので、バリケードを越えて入り口に向かう。1番入り口側のバリケードにたどり着いたとき、急に頭がクラッとした。そのまま頭と体が熱くなり、うずくまってしまった。後ろから女の子に心配されたのだけど、どうも自分があのモンスターに変身していくのだろうということを悟った。傷から菌がうつったとかそういうことなのだと思う。
「僕はあいつらになろうとしているみたいだから、早く撃ち殺してくれ」と頼んだけど、女の子は「まだなると決まったわけじゃないでしょ」と殺してくれない。ライフルは長い形状のものだから、自分で自分を撃つことができない。とにかく僕が建物の中にいては、モンスターどもにより有利になってしまうと思い、近くの窓を割ってそこから飛び降りた。