dinner 第3話「美食女王来店!嫌な注文」

ロッカビアンカは雑誌の取材を受けている。カッソーラのリファッタはロッカビアンカの新メニューとして写真をたくさん撮られている。新料理長の元に厨房はうまく回っていると言った矢先に、厨房からパスタの茹で時間でもめる数馬と江崎の声が聞こえてきた。新しいお店のコンセプトを聞かれた沙織はわかりづらい説明をしてしまい、一言でまとめようとしてもうまく答えられなかった。
夜の営業時間になったが相変わらず客足は戻らず、座席は空席が目立った。沙織はコンセプトをうまく答えられなかったことを気にしていた。恵理子に美食評論家のカリスマ朝倉恭子を招待し別の方面から宣伝してはどうかと提案した。ブログの読者は100万にもいるので雑誌よりも影響力が大きいかもしれないらしい。
朝倉は別のお店で料理を食べ、そこの店員からロッカビアンカの新料理長の噂を聞いた。帰りにはお土産の品と封筒に入れられた原稿料がいっしょに渡された。また来ると言い残してタクシーに乗った朝倉は封筒の中身を確かめて満足そうに笑った。店員もまるでハイエナだと言うが、お店の評判のためと思うと止むをやなかった。朝倉はタクシーの中で次のターゲットはロッカビアンカに決めたようだった。


厨房では相変わらず江崎が新メニューの開発をがんばっていた。スタッフたちは控え室で江崎のその姿に呆れていた。そこに沙織が前回取材を受けた雑誌を持ってきた。ロッカビアンカは小さくページの下の方に写真1枚だけ写っていて、店のコンセプトなどが何も書かれていなかった。悪くなった空気を変えるように今井が仕込みを始めるぞと声を掛けた。
その夜朝倉がさっそくロッカビアンカに訪れた。いつも使っていた席が埋まっていて朝倉は料理もまだ来ていないので変わってもらえないかと言ってきた。沙織が瀬川に相談して決めかねている間に朝倉は機嫌が悪くなり帰ってしまった。しかし、沙織の優柔不断な態度を見ていた朝倉は店をでるといいカモを見つけたとにやけていた。
厨房ではまた数馬と江崎がパスタの茹で時間でもめていた。数馬は切れてしまい、他のスタッフも言い方が悪いとか辰巳のように愛がないなどと文句を言い始めた。仲良くやるために来たのじゃないと江崎が言うと、数馬はついに厨房を出て行ってしまった。オーダーが入り江崎が読み上げたが、スタッフたちはやる気のない返事を返すだけだった。
数馬は控え室でスマホで息子の写真を眺めていた。今井が控え室に入ってきて、江崎が数馬を認めているからうるさく言っているんだと一言だけ言って厨房に戻っていった。
閉店作業をしていた瀬川に弥生が声をかけた。娘の入学準備などで急にお金が必要になって給料の前借りをしたいとお願いした。実は瀬川も辰巳に何度か同じお願いをしていた。弥生が沙織ではなく瀬川に頼んだのは沙織にはそういうことを言い難い雰囲気があるのと支配人として頼りないからだった。
帰る準備をしていた江崎に沙織がひきとめ、厨房のチームワークを良くして欲しいと話を始めた。どうすればいいかと江崎に聞かれるとまずは江崎の歓迎会をしようと提案したが時間の無駄だと断られた。逆に沙織がどうすればいいかと質問すると、それを考えるのがお前の仕事だろうと返された。まずは沙織と江崎でじっくり話をしようと誘ったが江崎は時間の無駄だとまた断ろうとしたが、寿司をおごるという沙織についていくことにした。
寿司屋に来た江崎だったが料理や味付けにばかり興味がいっていて、仕事の話には全然ならなかった。厳しいだけではついてこないので褒めて伸ばすなどを沙織は提案したが、仕事のできない奴を褒めるわけにはいかないと全然受け入れられなかった。言い方が良くないと沙織は呆れていた。
帰ろうとするはづきはまた警察に見張られていた。はづきの親が死ぬ前に子供に会いに来ると刑事は自信満々だった。
料理のことばかりまだ研究している江崎だったが、沙織は横で酔って愚痴ばかり言っていた。オーナーの娘だからとか、みんなの顔色を伺ってきた苦労が分かるかと愚痴ると、みんなの顔色ばかりうかがって自分の信念を貫けない奴を支配人と認めないと江崎は言った。何か感じたようだったが続けてお酒を頼み、完全に酔いつぶれて江崎におんぶされて帰ることになった。
沙織が二日酔いでロッカビアンカに来ると、江崎はいつものごとく新メニューの研究をしていた。スタッフは朝倉のブログを見ていた。そこにはロッカビアンカは料理の味だけでなくお客への対応も落ちたようだと散々に書かれていた。朝倉のコメント1つで潰れた店もあるとスタッフたちも意気消沈していた。瀬川がもう1度朝倉を招待してもてなすと提案すると、すぐに沙織は電話をかけようとした。そのやりとりを聞いていた江崎はたった1人の客に踊らされているのが滑稽だと笑った。
また朝倉はすぐに来てくれた。スタッフが並んで挨拶をし万全のお出迎えだった。今回はお気に入りの席も当然用意されていた。瀬川が新メニューを見せたが、料理長を呼べと朝倉は言った。江崎が厨房を出て行くのをスタッフはみんな緊張した顔で見送った。江崎が朝倉の前に行くと、オススメの食材を聞かれ、トレビィーゾ産のラディッキオをすすめるとそれでフルコースを作るように要求してきた。江崎は楽しそうに承知しましたと答えた。
ラディッキオのフルコースと聞きスタッフたちは不安がるが、江崎はさらの楽しそうにスタッフに必要な指示を出し始めた。ラディッキオのコースは江崎が作り他の人の料理は今井に任された。沙織も念入りにお願いしてホールに戻った。江崎の作る料理にみんな横目で気にしていた。前菜のフォアグラのテリーニとラディッキオの墨煮が出来上がった。次のパスタは数馬に手伝わせた。
朝倉の前には前菜が運ばれたが、他の客のことも気にせず朝倉はデジカメで料理の写真を撮った。見た目より問題は味と言い料理を食べ始めた朝倉は味にも満足しおいしいと答えた。テレーザにいたのは嘘じゃなさそうでパスタも期待していると料理長に伝えてくれと朝倉は言った。新しいお客さんとして赤ちゃんと小さな子どもを連れた常連の小林家族が来た。朝倉はそれを少し嫌な顔で見ていた。
前菜の好評さを沙織は江崎に伝えたが、江崎はそれに耳も貸さずに数馬とのパスタで息をあわせようとしていた。ラディッキオの葉でつつまれたパスタが出来上がった。スカンビとズッキーニのタリオリーニとパスタの名前を言った。数馬と江崎の連携を見て瀬川と沙織も安心した。
小林の子供がおもちゃで遊んでいることで朝倉は恵理子に注意させるように言った。朝倉は出来上がったパスタをまたデジカメに撮り、味見をした。これなら自信を持ってオススメできそうと満足していた。そして、「じゃぁ原稿料は30万、次から10万円。これで半年先まで予約がうまるとおもえば安いものでしょう」と沙織にお金を要求してきた。沙織は困った顔をしばらくしていたが、かしこまりましたと返事をして奥に消えた。朝倉は他の客も気にせずに大きな声で電話を始めた。そこで泣きだした小林夫妻の赤ちゃんには嫌な顔をした。
沙織は他のスタッフに聞こえないように金庫にある仕入れ用のお金を朝倉に渡せるように準備してくれと瀬川に頼んだ。はいと返事をした瀬川だったが、仕入れ用のお金は弥生に給料の前借りということで渡してしまっていた。
厨房ではラディッキオをカツレツにするという江崎のアイデアに他のスタッフは驚いていた。ラディッキオアンラミラレーゼが出来上がった。
朝倉はまた料理を写真を撮り、他のお客さんは嫌な顔をしていた。料理のことは絶賛していた。小林夫妻のテーブルには母親用の誕生日ケーキが運ばれ子供によりバースデイソングが歌われた。そこで朝倉がついに切れて直接文句を言い始めた。沙織が止めに入ったがロッカビアンカは品位のないお店になると朝倉が脅すように言った。それを遠くから江崎も眺めていた。
小林夫妻は謝り帰ろうとした。それで朝倉は機嫌を直したようだった。帰ろうとした小林夫妻を沙織は止め、帰って欲しいという朝倉に「このお店ではすべてのお客様に平等です。親御さんも迷惑をかけないように気を使っているので温かい目で見てほしい」とお願いした。朝倉は小声で「あっちの家族と私とどっちが大事か?私に逆らうとどういうことになる分かっているのよね?」と本格的に脅した。沙織は毅然とした態度で「この店の支配人は私です。朝倉様の都合で他のお客さまを帰すわけにまいりません」と反論した。朝倉はこんな店すぐに潰したやるからと沙織に言って朝倉は帰ろうとした。
瀬川がそれを止め、招待分以外の追加のワイン代の会計をお願いした。請求書を送ってくれとさらに朝倉は怒って帰っていった。瀬川は他のお客様にお詫びにバローロをサービスするといい、場はおさまった。沙織は小林夫妻にもパーティのやり直しをしましょうと話しかけ、これからも来てくれるように言った。
営業時間が終わると、朝倉のブログにロッカビアンカは最低の店で存在価値もないと書かれていた。私のせいですと謝る沙織だったが、スカッとした、支配人は間違っていませんと他のスタッフはうれしそうだった。小林夫妻がまた予約をしてくれ、息子が将来奥さんと来てくれるかもしれない、その方が大事ですと瀬川も同意した。沙織は料理をつくってくれた江崎にも謝ったが、香水臭い女に味なんか分からず無駄になったとフォローするような返事をした。
沙織は店のコンセプトを「誰もが気取らずに食べられるレストラン」にすると発表した。スタッフもみんな笑って認めてくれた。そのまま江崎の歓迎会の流れになったが、江崎は時間の無駄だとそのまま帰ろうとした。じゃぁどうすればいいんですかと沙織が聞くと、「それを考えるのがお前の仕事だろう支配人」と沙織を始めて支配人と呼んだ。沙織は支配人と呼ばれたことに喜び、スタッフたちもみんな笑顔になった。